反対側のテーブルでは、トビアス修道士が、下のような見事なハンドを手にしたばかりでした。
♠- ♥AQ854 ♦- ♣AKQJT862
こんな怪物のようなハンドをどうやってビッドすればいいのだろう、と考えていました。
・たぶん、1♥とビッドすべきだろう。
・その後全員がパスで終わる可能性は低く、
もし奇跡的にパロットが2♥にレイズしたら
5NTをリビッドして、トランプのアナーの枚数を
訊こう。
ところで、誰がオープニングビッドしたのだろう。
ああ、オコク夫人だ。
・「4NT」と、トビアス修道士の左側に座る
オコク夫人がオープンしました。
・「5♠」と次のパロットがガーガー鳴いて
ビッドしました。
・「パス」とNのナブーバ嬢。
・トビアス修道士は椅子に深く腰掛けました。
「あなたのパートナーの4NTはどういう意味
ですか?」彼はナブーバ嬢の方を向いて尋ね
ました。
「Aを持っていれば、そのスートをビッドする
ように言っています」と返事が来ました。
「それを知っているなんて驚いたよ」
「私たちもオープニングの4NTをそのように
使います。あなた達も同じかどうか尋ねたの
です」
4NTのオープナー、オコク夫人の♥は多くて
も1枚と思われるので、パロットが♥Kを持っ
ていたとしても、勝てる保証はありません。
「6♣」トビアス修道士は言いました。
・オコク夫人はカードにザっと目を通し、
「6♦」とビッド。
・このビッドがトビアス修道士に回って来まし
た。
オコク夫人は明らかに何か奇妙な手を持って
いるようだ。
パロットは良い♠を持っているに違いない。
ディクレアラーが♥や♣でたくさん勝てること
は絶対にありません。
「ダブル」とトビアス修道士が言いました。
それ以上のビッドはなく、6♦xがコントラクトになりました。
コントラクト:6♦x
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パロットは、トビアス修道士のダブルをライトナー
と読みました。
※ライトナー:スラムのリードを示唆するダブル
♥のボイドよりも♠がボイドのほうが可能性が高い
と思われるので、リードとして選んだのは♠6です。
これは低いスートの♣でリターンを示唆するローカードです。
しかし、この細かい注意は報われませんでした。
トビアス修道士は♠を持っていませんでしたが、
ラフできませんでした。
・オコク夫人は、♠Aで勝ち、
切り札を狩り切って、
残りのカードを広げ12トリック獲得を宣言し
ました。
「信じられない!」
パロット(オウム)はガーガーと鳴きました。
「何を持っていたのですか?」
「えーと... AとQを含む、5枚♥です」とトビアス修道士は答えました。
「それから?」パロットはしつこく尋ねました。
「そして、8枚の良い♣だ」とトビアス修道士。
「ビッドするには厄介なハンドだった」
「そんなハンドを持っていたら、スラムをビッドし
ましょう」とパロットが金切り声で言いました。
「自分の手からわかるように、7♣は100点以上の
失点はしないでしょう。最悪でも300点です。」
「それ以上のことも考えられます」
とトビアス修道士は断言しました。
「いずれにせよ、5♠をビッドしたあなたはAとK
のどちらも持っていませんでした」
「私は♥と♣にAを持っている」
「少なくともあなたが♠で1勝できると考えるのは
当然でしょう」
「4NTのオープンを聞かなかったのか?」
とパロットは問い詰めました。
「ディクレアラーが、何かビッドするとは思わ
なかったのか?」
「7♥はあなた達の勝ちよ」とオコク夫人。
「エキスパートなら、おそらく6♦に6♥をビッド
するはずよ」
「そうだ、そしてそのエキスパートは頭を検査した
ほうがいい!」
とパロットは続けました。
「ブリッジでこれほど高くつく判断ミスを見たこと
はない!」
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