Part2 もっと大胆で素晴らしいビッドをするための方針

 Part2-4 ショートクラブ・コンベンションの使い方と危険性


(注:中野)4枚メジャーシステムです。


いわゆる「ショートクラブ」と呼ばれる1Cオープンを、 敵も味方も入り乱れる大流行に導いたのは、面倒くさがりなプレーヤーの一団です。

この「ショートクラブ・コンベンション」は、
(信頼できるプレイヤーの間ではそのようなものは存在しないため、あえて「」で括っておく) 必ずしも良い♣を持っているわけではありませんが、 「パートナーが他のどのスートをビッドしてもサポートできる」 と考えるプレイヤーに好まれています。

この不自然で人工物の1Cオープンに対して返ってくるレスポンスで最も多いのは「2C」であり、 もう一つの定番は「1NT」です。

どちらのレスポンスもオープナーの意図に反し、振り出しに戻ります。
つまり、妥当なトランプを探す手探りがこれから始まるのです。
おまけに、今度はより高いレベルから始めることになります。

私が想像力や覇気に欠けていると非難される前に、これだけは急ぎ付け加えておきます。

厳密な意味でビッド可能な♣スートを持っていなくても、 エキスパートが1Cでオープンするような状況があることは、私も承知しています。
例えば、以下のようなハンドを持っているとしましょう。

・♠KQ87 ♥KQ63 ♦75 ♣AK2


強くて良いハンドですが、圧倒的に魅力的なオープニングビッドはありません。

もしパートナーがビッド可能なメジャースーツを持っていれば、ゲームを狙うチャンスがありそうです。
もしパートナーが良い♦を持っていれば、おそらく3NTの可能性が高いでしょう。
パートナーが5枚の♣で、9〜10ポイントを持っていれば、 ♣でのゲームも完全に不可能というわけではないでしょう。

従って、ここで1♣オープンすることに合理性はあり、 大怪我をする危険もありません。

しかし、ブリッジがプレイされているほぼ全ての場所で、 実際にどのようにこのショートクラブが使われているかを見てみましょう。
面倒くさがりのプレイヤーが次のハンドを持っています。

・♠AQJ3 ♥KQJ ♦Q95 ♣642


きっと「1C」でオープンするでしょう。
Kを欠いた♠でオープンするのは、あまりにも大胆で、無鉄砲で、 そしてプレーが大変すぎると考えているのです。

パートナーがスーツを選んでくれれば、この面倒くさがりなオープナーは、精力的にサポートを示し、 地の果てまで喜んでついて行くでしょう。

実際のところ、1Cのオープンによって得られるメリットで、 通常の自然な1Sオープンで得られないものなど何一つありません。

しかし、もしコントラクトが1Cのままパスで流れて確定してしまったとしましょう。
そうなれば、今回のオープナーは15ヤードの後退(アメフトの大きなロス)という大痛手を負うことになります。

1Cのオープンから何らかの利益が得られるのであれば、このリスクを冒すのも理解できます。
しかし、そんな利益はどこにもありません。

こうした人は、よく「ショートクラブ・コンベンションを使いますか?」と尋ねてきます。
もしある試合で、このような人物と偶然ペアを組むことになってしまったら、 切り抜ける方法はただ一つです。
急病のふりをして、大急ぎで逃げ出すことです。

「ショートクラブ・コンベンション」などという仕掛けは存在しないし、 ブリッジ界の上層部が集団で正気を失わない限り、そのようなコンベンションが認められることもないでしょう。

それにもかかわらず、「ショートクラブ」のビッドは未だに人気を保っています。
その実践者たちは、自分たちの消極的なビッドにすっかり心を奪われており、 最近ではそのうちの一人が次のようなハンドで1Cオープンするのを目撃しました。

♠KQ73 ♥KQ64 ♦AK3 ♣92


確かに、彼には2つのビッドしたくないメジャースーツという問題があったのでしょう。
しかし、パートナーにメジャースーツのフィットを期待して、 どうしてもこの人工物で不自然なビッドをするのなら、なぜ「1D」とビッドしなかったのでしょうか。

それは「1C」オープンするのと同じ効果があり、大惨事になる可能性は遥かに低いのです。

その日の夕方遅く、私はこの紳士に彼のビッドについて尋ねてみました。
「いやぁ」と彼は親切そうに言いました。
「クラブをビッドしたのは、それが『ショート・クラブ・コンベンション』だからですよ」
「ああ、なるほど」
「そのことを忘れていましたよ」と私。

その男は勝ち誇ったような笑みを浮かべて立ち去りました。
それ以来、彼はすべての友人と何人かの敵に、この話を言いふらしているに違いありません。

「あなた、本当にあのチャールズ・ゴーレンにブリッジについて何か『説明』したの?」
「したとも。本当に説明してやったんだ」

私の対応を偽善的だと思うかもしれません。
しかし、この男が30年間もブリッジをプレーしてきたことを私は知っています。
それだけの時間が経ってもなお、
「ショート・クラブ・コンベンション」が存在すると信じ込んでいるのなら、 ライフマスターが束になってかかっても、 彼の考えを変えさせることなど到底できないでしょう。

使うべきではないビッドの話が出たついでに、 もう一つ挙げさせてください。

それは「トラップ・パス」です。
論理、数学、そして良識というあらゆる法則に背くこの忌むべき行為は、 模範囚による減刑なしの「禁錮10年~20年」に指定されるべきです。

トラップ・パスをする人は、神様が自分を気に入りすぎるあまり、 平均、確率、そして偶然の法則をひっくり返してくれると思い込んでいる利己主義者です。

トラップ・パスをする人は、16ポイント持っていても、 たいていは声をからし、にやにやと薄笑いを浮かべながら、「パス」と言います。

この時点で、彼のビッドがインチキであることが即座にバレます。
(もし彼に優れた役者になれるほどの知性があれば、そもそもトラップ・パスなどしないでしょう)

この時点で、残されているハイカード・ポイント(HCP)は、わずか24ポイントしかありません。
そして、数学的に言えば、残り3人のプレイヤーに約8ポイントずつ分配されている計算になるのです。

このような状況で、罠を仕掛けようとトラップパスした人は、 なぜ相手がビッドの競り合いに付き合い、大損することになるほど十分なポイントを持っていると思えるのでしょうか?

私に聞かないでください。
答えようがありませんから。

しかし、これだけは言えます。
トラップ・パスした人と、その犠牲になったパートナーは、 ゲームビッドで大量得点を得る可能性があります。
しかし、そのトラップ・パスという行為は、 その事実に永遠に気づかないようにする見事な役割を果たしてしまいます。

全員がパスをしてそのディールが流れたとき、 トラップ・パスした人はもの凄い速さでカードを中央に投げ捨て、同時にこう言うでしょう。
「9ポイントあったんだけどな」と。

彼は自分を恥じているのです。
可愛そうな男ですが、それも仕方はありません。

トラップ・パスという戦術は、
「カード(の配られ方や流れ)は、浴槽の水の渦と同じ方向に流れる」 という古い迷信と同じくらいしか価値がありません。

この2つの考えを比べるなら、まだ後者(浴槽の法則)の方が論理的だと私は思います。