Part2 もっと大胆で素晴らしいビッドをするための方針

 Part2-1 剣豪になる方法


ボディビルダーの「チャールズ・アトラスの広告」を覚えていますか?
「体重97ポンドのひ弱な男だった」というあの宣伝です。
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「体重97ポンドのひ弱な男」とは、
英語圏で「自信がなく、ひ弱で頼りない男性」を象徴する代名詞・決まり文句
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幸いなことに、アメリカ社会からは、 そうした「97ポンドのひ弱な男たち」は殆ど姿を消したようです。
しかし、ブリッジのテーブルにはまだ居ます。

トランプの一組に、一体どんな魔力があるというのでしょうか。
活動的で押しが強く、頭の切れる人間を、 Caspar Milquetoast(キャスパー・ミルクトースト、気の小さい人の代表的イメージ)に変えてしまい、 ビッドも控えめ、プレイも消極的、 相手やパートナーの視線の下でおどおどと身をすくめ、 もじもじとした態度をとらせてしまうのです。
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Caspar Milquetoastとは、 アメリカの漫画『The Timid Soul(おくびょう者)』に登場する、 極端に臆病で気弱な主人公
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「そんなの俺じゃない」とあなたは言うかもしれません。
俺はテーブルのCommando Kelly(コマンドー・ケリー、勇敢な兵士のイメージ)だ、と。
それなら、あなたは例外ということになります。
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Commando Kellyとは、第二次世界大戦で活躍したアメリカ陸軍の英雄、 チャールズ・E・ケリー伍長(Charles E. Kelly)の異名です。
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いわゆる平均的なプレイヤーの殆どは、安全策を取り、 神経質にプレイする傾向があります。
ビッド中にポイント計算を10回もし、そして9つの異なる答えを出します。
ゲームの可能性が十分にあるハンドをパスアウトし、 次のディールではもっと簡単なもの (ゲームをビッドしてスラムができるような大当たり)が来ることを期待します。
試合終了時には、数千ポイント負けていて、
「一体どうしてこんなに負けたんだろう?  かなり保守的にビッドしていたのに」と言いながら、惨めな気持ちで家路につくのです。

その通り。
歴史上の有名な格言を少しひねって、ブリッジの基本原則に言い換えると、こうなります。
「腰抜けのプレヤーは負ける、完全な腰抜けのプレヤーは完全に負ける。」

この背後にある理屈は複雑ですが、主に次の事実に基づいています。
コントラクトブリッジの数学的な仕組みは、
臆病なビッドをする者はその臆病さに対して、
大胆なビッドをする者がその大胆さによって受ける罰よりも、 遥かに厳しく罰せられるようになっている、という点にあります。

臆病なプレーヤーがゲームやスラムビッドしないことによるその損は、 間違いなく700点~1,000点より小さくなることはないでしょう。
大胆なビッドをした人がダウンすると、その損はだいたい50点から200点、 多くてもその程度で済みます。
おおよそ5対1の割合で、このゲームは冒険好きで大胆で勇敢な人に有利になるように できているのです。
見た目ではそう見えないのですが。

スコアには、大胆な人がダウンした結果として800点もの失点が記録されています。
800点ともなると、 相手のスラムメイクと同等に思えるかもしれません。
では、大胆な人は実際にはどれだけ損をしたのでしょうか。
相手がゲームをメイクしていた場合、およそ600点ですから、 大胆な人の実際の損失は200点ということになります。

一方で、Mr. Milquetoast(極端に気弱な人、腰抜け)のスコアには、 そんな圧倒的な大敗の跡は見当たりません。
しかし、それは損失が存在しないという意味ではありません。
むしろ、その損失は目に見えないだけで、より大きいのです。
Mr. Milquetoastは3Sで止まり、結果的には4メイクすれば、170点が記録されます。
もし4Sまでビッドしていれば、620点が記録されていたはずなのです。

彼はその場でいきなり 約500点を失いました。
だが、実際にはもっと多く失っていたかもしれません。
もし4Sとビッドしていたら、 相手はゲーム対して無理な競り合いに出て、800 点の損失をしたかもしれないのです。

それに、ときどきMr. Milquetoastみたいな人が、 メイクできそうもないのに4Sとビッドすると、相手が無謀な競り合いに出てしまい、 こちらに 300点~500点の儲けが転がり込むことだってあります。

実のところ、際どいゲームに 3回に 1回成功すれば、トータルではプラスになるのです。
ブリッジの点数計算が「向こう見ずで、無謀で、愚かな連中」に有利になるように出来ている、 とは言っていないということです。

その二つには違いがあります。
もし少し時間をもらえれば、その違いを説明しながら、 あなたのゲームに対する考え方そのものを変えていきたいと思います。

よい生徒になってくれれば、そう時間はかからず、 あなたはテーブルで一番の“豪快なビダー”に見えるようになるでしょう。
あなたはこれまでよりずっと頻繁にダブルを掛けるようになり、 ときにはリダブルまでかけるようになるでしょう。

正直に言ってほしい。
最後にリダブルしたのは何時でしょうか?
1947年?、それとも1937年?
平均的なプレーヤーなら、虫垂炎の手術を受けるくらいの頻度でしかリダブルしなでしょう。

あなたは以前より多くのスラムをビッドできるようになり、 その到達の仕方もずっとストレートなものになるでしょう。

時には、ゴーレン・システムを完全に放り出し、 自分自身の判断を優先することさえあるでしょう。
要するに、あなたは誰にも負けない強力なプレイヤーになるのです。

では、この壮大な変身はどうやったら起こるのでしょうか?
ブリッジ界には「奇跡の妙薬」はなく、 単純な計算、単純な論理、単純なブリッジの基本によって実現できるのです。

しかし。私たちは怪しげな「万能薬」の洪水に飲み込まれつつあり、 不変の真理のいくつかをそれで蘇らせようとしているのです。

そして、あのウィリアム・サマセット・モームが見事に言い表した、 すばらしく純粋で論理的な世界へと立ち返ろうとしているのです。

「もし君が冷静な頭脳を持ち、物事を正しく組み合わせて正解を導き出す能力があり、 そして自分のハンドについて一切ごまかさずありのままの真実を伝えるなら、 君は信頼できるパートナーとなり、そして手ごわい対戦相手になるだろう」